マリコの言わせてゴメン!

  • みんな腫れ物に触るようでした
    20歳の誕生パーティーの席で、ヘアヌード写真集『NUDITY』の出版を発表した菅野美穂さん。"清純派"のイメージが強かっただけに、突然の出版はいろいろな憶測を生んだ。なぜ菅野さんは、ヌードになったのか。林さんが、その心境を聞いた。

    林「今回、写真集(『NUDITY』)を出して、いろいろ騒ぎになってるけど、 なんでこんなことまで言われるんだろうって思うこと、いっぱいあんじゃな いですか?

    菅「発売前に、写真集のことが新聞に出てしまったり、雑誌に写真集のページを載せられたときは、なんとも言えない嫌な気持ちになったんです。いろいろなことを言われましたけど、自分にとっては永遠に近い作品だと思ってます。 でも、こんなに騒いでもらっても、1年後には古本屋で売られてるかもしれない。(笑い)」

    林「逆にプレミアムがついてるかもしれないですよ。」

    菅「いやいや。そういうものだと思うんですよ、世の中の流れとか時間は。 だから、カメラマンさんと熱愛じゃないかとか、事務所が借金苦じゃないかとか、そういう記事は事実と違うから気にならなかった。人の噂も75日で、そういう噂って時間がふるいをかけてくれて、なくなっていくものだと思うし。不思議なことに、今度の写真集に関して、私への直接の取材の数はすごく少ないんです。ほんとのことを知りたいと思ってる人が少ないみたいで。でも、直接取材してくれた人のおかげで、マスコミはコワいだけじゃないんだとも思ってるんです。(笑い) 」

    林「発売しなければよかった、なんて後悔はしなかった?」

    菅「撮影は自分にとって有機質なことだったんですけど、発売は無機質なことだ から、発売したこと自体で自分は変わらないと思ってたんですよ。 今回は自分の記録として残したいと思っていたから、出版しなくてもよかったのかもしれないけど、どうせ作るなら本棚に立てかけておける作品を作りたかった。でも、こんなに大きなリアクションは想像してませんでした。いま、もしかしたら大変なときかもしれないんですけど、いいほうに考えれば、これを機会にまた私は変われるなと思って。"大変"って大きく変わるって書くじゃないですか。」

    林「"清純派"って言われるの、嫌でした?」

    菅「ちょっと違うとは思ってました。嫌とは思わないですけど。」

    林「まだ20歳だものね。20歳前に"清純派"じゃなくて別の名称だったら嫌ですよね。」

    菅「アハハハ、そうですよね。実際、水着の撮影とかも避けて通ってきたので、 よけいに・・・だから今回の写真集は、たぶん自分を追い詰める作業だったと思うんですよ。」

    林「20歳で、そんなに自分を追い詰めなくてもいいのに。」

    菅「うーん、そうですかねぇ・・・。なんかモヤモヤしてたんですよ。」

    林「もうスッキリしました?」

    菅「突き抜けた感じはちょっとするんです。」

    林「あ、そう。それだったらすごくよかったですよね。」

    菅「はい!ありがとうございます。(ペコンと頭を下げる)」

    林「宮澤(正明)さんというカメラマンに、すべて託そうという感じだったんで すか。」

    菅「本格的に取り始めたのは去年の9月ごろなんですけど、最初は作品撮りみたいな感じで、写真集にする前提じゃなかったんですよ。"雑誌とかに出すんじゃなくて、僕の作品として撮りたい"と言われて・・・。」

    林「その間、ほかのいろんな有名なカメラマンの方にも撮ってもらったことあると思うんだけど、やっぱり宮澤さんだと思った?」

    菅「ほかの方が嫌だというんじゃなくて、仕事じゃないところで私を撮りたいと おっしゃってくださったのは宮澤さんしかいなかったんです。」

    林「宮澤さんが、"ニコパチ写真はいやだ"って何かに書いてらしたけど、私はあの写真集を拝見して、もうちょっときれいな写真があってもいいなと思っ たんです。荒木(経惟)さんが30過ぎた人生経験豊富な人を撮るみたいな 撮り方だなと思った。菅野さん、20歳になったばかりの、こんなにきれい な女の子なんだから、南の島に行って撮るみたいな写真もちょっと見てみたかったな。」

    菅「そうですか・・・。宮澤さんには、素の私を撮りたいと言われて、撮ってもらってるうちに、仕事してる自分と、いまこうやって撮影してる自分とのギャップがすごく大きいなと思ったんですよ。もともと"いつもの菅ちゃんらしく"とか、普通にしてても"きょう元気ないね。どうしたの?"と言われるのが、つらかったというか。それを受け入れられないと、プロとしての資格はないのかもしれないけど、ちょっと違うなあと思っていたから。」

    林「ほんとの私じゃないと?」

    菅「それまで撮影というと、自然に身についたノウハウというか作為的なものがあって、無意識のうちに撮影用の表情をつくってたんです。だから作為的 じゃない、ほんとの自分の表情をみてみたいという気持ちは強かったんですよ。それが結果的にヌードという形で周囲を驚かせたと思うんですけど、そこに至るまでには時間もかかったし、考え方も変わって、けっして勢いとかノリとかじゃなかったし。」

    林「たとえば男の子が買うと、男の子なら当然の行為に使われることも覚悟しな きゃいけないわけですよね。それは自分の中で整理できたの?」

    菅「お客さんの手元に届いたら、それはその人のものだから。やっぱりただの ヘアヌード写真集だと思われたら、それはそうだと思うし。自分ではそうい うふうには思ってないですけど。」

    林「でもあの写真集、裸の写真はそんなにないですよね。期待してる人には気の毒だけど(笑い)。自分のお部屋で撮ってるんですよね。もっとすごいお部屋に住んでるのかと思ったけど、わりと質素ですよね。(笑い)」

    菅「アハハハ、普通です。」

    林「靴箱が何箱もあったけど、靴がお好きなのね。女の子はそういう細かいところを見ちゃうかも(笑い)ネガチェックは自分でしたんですか。」

    菅「 しました。いままであまり自分で見たことないような表情がたくさんあって、そういう喜怒哀楽の間にいるような表情が自分でわかるようになると、いい お芝居ができるようになるのかなと思ったりして。裸の写真のベタ焼きを見せていただいても、ああ、こうなるんだという感じで、恥ずかしいとか嫌だ とかいうことは特になかったんです。ただ、これは自分でも不思議なんです けど、ページ構成の紙を見せていただいたときは、なんとも言えない嫌な 気持ちになりまし た。」

    林「"やめて"とか言わなかった? 」

    菅「思ったんですけど、もう一回見直したら平気だったんで。ただ、本人がそう思うってことは、家族はもっと嫌な気持ちになったりするのかなとは思いま した。でも親に見てもらったら否定はしなかったので・・・。」

  • オーディションの時の写真は、コロコロして二重アゴでしたね

    林「こうして話してても、菅野さんは自分の言葉を持ってて、すごくしっかりしてますよね。記者会見で泣いちゃったのは、言葉だけでは自分の感情がうま く伝わらないんじゃないかって思ううちに、感極まっちゃたの?」

    菅「人前でしゃべったことがワイドショーや記事になるってことで、テンションが高くなってたとは思うんです。泣いたのは、"お友達の反応は?"という 質問をされたときだったんです。私は今回、友達に全然相談しなかったから。でも、友達がくれた手紙に"カッコよかったよ"って書いてあって、そのことを言おうとしたら感極まってしまったんです。」

    林「20歳の誕生パーティーのときも、憂い顔だったとか。」

    菅「言葉できちんと伝えたいって思ってたから、真剣な表情になってたのかもしれないです。」

    林「ニッコリ笑って、"ありがとうございます。皆さん、見てください"とか、そういう通り一遍のことは言いたくなかったわけね。」

    菅「そういうの、聞きたくないんじゃないかと思って。」

    林「"失楽園"で共演していた方たち、写真集のことで何か言ってた?」

    菅「いや、何にも。腫れ物には触れないでおこうみないな。べつに腫れてはなかったんですけど、腫れてると思われてたみたいで。(笑い)」

    林「"失楽園"、高視聴率でよかったですね。菅野さんもいろんなテレビ評で演技を誉められてましたよ。"唯一の収穫は菅野美穂の成長だ。ドラマはイマイチだが"って。(笑い)」

    菅「いやいやいや、とんでもないです。ただ、テンションが高い性愛の描写があるなかで、家族のわび・さびてる落ち着いたシーンをどう演じるかっていうのは悩みました。」

    林「"わび・さびてる"っておもしろい表現ね。(笑い)」

    菅「お茶を飲む芝居で見てる人を飽きさせないというのは、ほんとに難しいなと思って。お父さんに恋心を抱くというところが、ちょっと理解できないなと思ったんですけど。(笑い)」

    林「お父さん役、古谷一行さんですよね。私、テレビで"失楽園"を見た次の日、帝国ホテルのレストランで、古谷さんが、オヤジっぽくズボンのベルトをズルズルズルって緩めながら歩いてくるの、見ちゃったの。 (笑い)」

    菅「すっごい暑がりで、ロケのとき、メーク車の中で上半身ハダカで "アチーッ"とかやって。(笑い)」

    林「ウワー・・・。そのあとでああいう濃厚なラブシーンをやるんだから、俳優さんてすごいですよね。でも俳優さんて演技力が高まってくればいいってものでもなくて、人気とかそういうものにも左右されますよね。」

    菅「こういう言い方は失礼ですけど、自分からファンの方が求めるものを追いかけては、自分がなくなってつらくなると思うんですね。お芝居する人って運命的にサービス業なんですけど、演じてる瞬間は自分のためだと思うんですよ。だから、このままマイペースでやっていけたらいいなと思うんですよ。だから、このままマイペースでやっていけたらいいなと思うんですけど、でも、いま恵まれている時期だからそう思うのかもしれないし。それに芸能界のお仕事って、家族の身にも降りかかるじゃないですか。今回は自分で決めたんですけど、家族とか周りの人の気持ちを考えたときは、それは自分勝手なことだなと思 って・・・。」

    林「でも、家族のことを気にしてたら、いい仕事はできないかもしれない。」

    菅「そうですね。でも、やっぱり今度からは家族とか周りの人に相談しなきゃいけないなと思いました。」

    林「昔から一人で決めちゃうほうだったの?芸能界に入るときも。」

    菅「親には"芸能界に入りたい"って宣言をしただけなんです。でも父は"どんなに才能があっても、巡り合わせがなくて夢を諦めなきゃいけない人もいるなかで、おまえは巡り会わせだけは巡ったんだから、 やれるところまでやってみたら"って。」

    林「いい言葉ですね。ずっと芸能界に憧れてたの?」

    菅「このまま学校を出て普通のOLになるんだろうなと思ってたから、 興味本位でオーデションに自分で応募したんですけど、実際その場に立ってみたらハマったというか。もっとお仕事したいなと思ったし。」

    林「小さいときから可愛くて、目立ったでしょ。」

    菅「目立ったなんてとんでもないですよ。私、視力がすごく悪いんで、厚いメガネかけて。」

    林「あ、このあいだ見た!菅野さんのオーデションのときの写真。 コロコロしてて、失礼ですけど二重アゴでしたよね。(笑い)」

    菅「そうです、ハハハ。」

    林「私、審査員の人の眼力ってすごいなと思った。ほかにレースクイーン予備軍みたいな人がいたのに、菅野さんが優勝したんで すよね。メガネはずさせたらものすごく可愛かった・・・。」

    菅「いやいや。私は素質があったから女優になったわけじゃないんですよ。役の巡り合わせやドラマの視聴率がよかったり して、人の目に触れる機会が多くて評価をもらってるんだなと思います。 過大評価だと思ってます。」

    林「まあ謙遜・・・。菅野さん、"ガラスの仮面"なんか好きじゃない?」

    菅「好きです、好きです。漫画、全巻持ってました。」

    林「そうでしょ!私、なんとなくそんな気がした。主人公のマヤちゃんの役やれるんじゃない?」

    菅「でもあの役、中学2年ですから、ちょっと難しいかなと思って。」

    林「大竹しのぶさん、31歳のときに舞台でマヤちゃんをやったんですよ。すごくよかった。あの人、憑依するというか、自分を空 っぽにして役を入れちゃう感じですよね。菅野さんはタイプ別にすると、どういう女優さんだと思う?」

    菅「私は大竹さんと逆のタイプだと思います。役は役で、自分とは違う人間だと思ってアプローチしていきたいんです。前に 「ドク」というドラマで、中国人の役をやったときに思ったんですけど、習慣とかって変えられないんですね。こうしてしゃべってても、日本人てうなずいちゃうけど、「中国人は そういうことしない」って言われて、ガーンと思って。自分では勉強して中国人になりきったつもりでいたんですけど、つもりはつもりでしかないんだなと思いましたね。」

    林「でも「ドク」のとき、すごく努力したんですって?中国人の先生に中国語を習ったり、とうとう中国まで行ったりとか。」

    菅「人間って自信がないとき、いろんなことがやりたがりますよね。だから自信がなかったんだなと思うんです。中国行って、芝居が豊かになる人もいるかもしれないですけど、私は落ち込んで 帰ってきました。」

    林「これから、すごく変わった役やりたいとか思わない?」

    菅「思います。いままではおとなしそうな女の子の役が多かったんで、今度はショートヘアの似合うような女の子というか。同じような役ばっかりしていると、こういうシーン、前にもやったなって思うんですよ。それってすごく恐いことだと思うんです。いつも新鮮な気持ちで現場にいないといけないなと思って。」 林「おうちでも、役づくりのことを考えちゃったりする?」

    菅「服装のこととか食生活のこととか考えますけど、あんまり考えすぎると、やたらと貫通力のあるお芝居になるというか。相手の役者さん関係なしに、自分のお芝居だけで突っ切ってしまったり。」

    林「ストレスたまったりしない?見るからにまじめな性格だから。」

    菅「いや、どうなんでしょう・・・。"一人カラオケ"行ったりとか。」

    林「エッ、一人でカラオケ?」

    菅「はい。カラオケボックスで。一人で行くと、1時間しか喉が続かないから、1時間でストレスが解消できるんで、いいなと思って。」

    林「芸能界にお友達いるんですか。」

    菅「あんまりいないですけど・・・。友達でいたかったら、一緒にお仕事はしたくないですね。自分の汚いところとか、絶対見えて しまうと思うし。」

    林「ディレクターの人に"やだ!"とか言ったり?」

    菅「納得できないときはそういうときもありますけど、現場では、どうしてもヒステリーになるんですよ。」

    林「いつも周りに気を使ってニコニコしてると思ってた。」

    菅「いや、ヒステリーですね。現場のマネージャーさんは大変ですよ (笑い)。感情の浮き沈みが激しくて、控室に入って、カギ閉めて出てこなかったりするんです。(笑い)」

    林「意外・・・。でもまだ20歳なのに、いろんなことを自分で決めてるんだから、ピリピリしちゃうかもね。」

    菅「でもいまは予想しなかったことに翻弄されながらも、自分の目標に向かってるような気がするんですよ。だからすこやかな感じです。」

    林「そうそう、誕生パーティーのときのプラダのドレス、すごく素敵だった。20歳の記念に自分で買ったんですって?」

    菅「20歳だから、振り袖買う気持ちで贅沢しちゃいました。(笑い)」

    林「私もお店行って、可愛いな、でもこんな小さいサイズだれが着るんだろうと思って、いつも見て触ってくるだけだったんだけど、 テレビで見て、あー菅野さんが着てる、カワイー!"とか思って。 私が行くのは原宿のお店なんだけど・・・。」

    菅「あ、私、原宿で買いました。」

    林「エッ、ホント!じゃあれ、菅野さんが買ったんだあ。(笑い)」


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