2時間ドラマ『クラッカー・侵入者』(1997.11.9)


資料部の田所は、もともと開発部に勤務しており業界では名の知れた存在だった。しかし、自分が開発したソフトを横取りされた上、左遷させられてしまったのだった。定年が目前に迫った田所は、上司の奥沢と下村への復讐のために自社が開発したシステムに侵入し用意した下村名義の口座に1億5千万円振り込まれるよう操作した。このお金で海外旅行に行ったり車を買って悠々自適な生活をしたいと思っていたが、妻には離婚を言い渡され子供も家を出てしまった今、そんな欲もなくなってしまった。


引っ越しの整理に追われる田所を部下だった岩崎ミカが訪れる。買い出しから帰った田所はミカがシャワーを浴びているのに気づき胸の高鳴りを覚える。「誰かのためにこのお金を使いたい・・・」何もかも失ってしまった田所の頭によぎるのはミカのことだった。


待ち伏せしていた下村に「犯人はお前だろ?」と問いつめられる。「証拠は何も残していない」と自分に言い聞かせるが動揺は隠せない。

翌朝、下村が飛び降り自殺をしたというニュースを見た田所は葬式に出席する。自分が疑われていると知った田所は、動揺して事件と関連性のある場所に来てしまったことを後悔する。

葬式の帰り道、奥沢に声をかけられる。奥沢も明らかに自分を疑っている口ぶりだ。

「殺したのは自分じゃない・・・」


ミカのことが気になった田所は会社に電話をするが無断欠勤しているという。心配になった田所はミカのアパートを訪れる。散らかしっぱなしの部屋を見て、何かを感じた田所はリダイヤルを頼りにミカの居場所を探る。


車のトランクに拉致されていたミカを救出した田所は自宅で事のあらましを聞く。


田所「何も聞かれなかったか?」

「なにもわからないんです。もう・・・怖くて怖くて。このまま殺されるんじゃないかって」


田所「奴らが狙ったのは君じゃないのかもしれない・・・。そうだ、狙われているのは君じゃないんだよ」



田所は傷心のミカを温泉に誘う。いつしかミカを女性として見ている自分に戸惑いながらも興奮を隠せない。


「胸がドキドキする。ドキドキしません、田所さんは?」

「悪いヤツに追われた親子が温泉町に身を隠してるって感じ?なんだかドラマみたいでちょっとかっこいい」


「あー、気持ちいい。こういうところでのんびり暮らしたいなー」

田所「暮らそうか・・・一緒に暮らそうか」


「えっ?」当惑するミカ

田所「・・・君といるとさ、娘のサチコといるような気がしてね」

「あたしも。死んだお父さんのことを思い出す」


無防備に寝息をたてるミカを複雑な思いで見つめる田所。


目覚めた田所は、ミカがいなくなったことに気づく。ミカは入院中の飯田を見舞うために東京に戻っていた。

飯田「まだ死ねないもんな・・・」

ミカ「そうですよ」


その場にいたたまれなくなったミカは花を買いに行くと嘘をつく。給湯室で泣くミカ。


ミカのことが気になった田所は会社や自宅に電話するが留守だった。田所は奥沢の家に押し掛けミカの居場所を問いつめる。しかし、逆に復讐のために1億5千万円を盗んだことを責められた。

奥沢「落ちたらはい上がれば良かっただろうが」

田所は何も言えなかった。


自宅に待ち伏せていた刑事に、岩崎ミカが自殺した井上文夫(開発部)の娘であったことを知らされる。

田所は、犯人はミカではないかと思いはじめる。もし、井上文夫が奥沢・下村に殺されたとしたら、ミカが次に狙うのは奥沢・・・。田所は、奥沢を尾行することにした。


ホテルで待ち合わせをしている奥沢。そこに現れたのはミカだった。

田所「一体どういうことなんだ。どうして君があの奥沢常務と・・・。」

「何も聞かないで・・・」

田所「君は亡くなった井上さんの娘さんなんだってね。君は何を隠しているんだ。話してくれ」


驚くミカ

「ごめんなさい・・・」走り去っていく


奥沢と関係のある小料理屋の女将に、ミカが犯されたことがあることを聞かされ憤りを覚える田所。奥沢に電話し、13時に会う約束をする。


奥沢の自宅を訪れた田所は、入り口で走り去るミカとすれ違う。奥沢は背中を刺されて死んでいた。

田所の自宅近くの公園でミカを見つける。

「どうして逃げなかったんですか?盗んだお金を持って逃げれば良かったのに」

田所「全部知ってたのかね・・・」

「田所さん、一緒に来てほしいところがあるんです」2人は飯田の所に向かった。



「父は運悪く会社の不正を知ったために、奥沢と下村に殺されたんです。それからは、何もかもが変わってしまって・・・どうしても許せなかった。何が何でも復讐してやろうと思った。」

「会社に入るまでは何も知りませんでした。父の親友が教えてくれたんです。」

田所「殺したのは君じゃないよな」

「飯田さんがわたしの変わりに復讐してくれたんです。でも、飯田さんは何も言いませんでした。それから飯田さん、時間がない^2って。とうとう今日の昼・・・病院を抜け出したんです。」


飯田は田所に真実を話した。ミカは給湯室にいる。

飯田「この間は本当のことを言わずに済みませんでした。彼女は奥沢たちを殺すことを知りませんでした。今度の計画はわたしが一人でやったことです。奥沢や下村の不正を最初に見つけたのはわたしなんです。井上はそれを知って保身のために何もしようとしないわたしに変わって奥沢たちに突きつけに行ったんです。井上は、わたしの変わりに殺された。癌が再発して先が長くないと知って井上の敵を討ちたかった」

復讐しても虚しいだけだったことを吐露する田所と飯田。

田所「結局、誰も自分を必要としてなければ生きていく喜びが得られないということをこの何日間で思い知らされました。」

田所「あの子が自分を必要としているんだと思ったんですよ。人間は、誰かが自分を必要としていなければ生きていけないんですね」

病室から出てきた田所にミカが声をかける

「田所さん」

田所「君と会えて良かった。わずかな間だったけど君と過ごせて良かった」

刑事に連行される田所。2年6ヶ月の実刑を受ける



二年後。出所した田所をミカが出迎えに来た。

「おかえりなさい」-おわり-


(都合により一部省略しました)
冒頭、菅野がお茶を配るシーンでベテランの俳優さん達との掛け合いをする場面がありましたが、ベテランの俳優さん達のこなれた台詞の言いまわしに比べ、菅野(独特)の"抑揚のある台詞まわし"が浮いていたのがちょっと気になりました(キャリアが違うから当たり前だけど)。それ以降は例のお得意の泣き&ヒス演技で主演の藤田まことを食ってました。フツーの(感情の振幅がない)芝居は場数踏まないとうまくなんないんでしょうね。
一番印象に残ったのは、「1億5千回分」に吹き出した場面っす(笑)。あれってアドリブ?

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