ビッグコミックスピリッツ(1997.10.27)出会いはスピリッツから始まった!
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-菅野美穂-
1977年埼玉県生まれ。20歳。T160 B81 W57 H82。
93年にデビュー以来、『イグアナの娘』『いいひと。』『失楽園』等のドラマやCMなどに多数出演。
また、現在公開中の映画『ご存知!ふんどし頭巾』にも出演中。
-宮澤正明-
1960年東京生まれ。36歳。日本大学芸術学部写真学科卒。
85年、赤外線フィルムを初めて写真アートに使用した作品『夢十夜』で日本人初の米国ICD新人賞を受賞。
個展等開催のかたわら、アイドルの写真集も多数手がける。
本誌「熱撮」「Pure」のカメラマン・宮澤正明が菅野美穂の素顔を撮り下ろし、本音を引き出す。
話題の写真集のふたりが出会うきっかけとなったスピリッツのグラビアならではのスピリチュアルトーク!
-まずは、二人の出会いから・・・
宮「初めてカンノと出会ったのは、スピリッツのグラビア('96年4号)の撮影、六本木のスタジオだったかな。」
菅「そう。まだメイク前で、歯を磨きにトイレに行って帰ってきた時かな・・・"なんか若い人だなぁ"って思った。」
宮「つい最近、「私、宮澤さんのこと、すごいイヤだったんです」とか言ってたけど、初めは少し警戒してたでしょ?」
菅「してた、してた(笑)。宮澤さんが以前に撮った写真集の中で、ちょっとセクシーなカットがあって、それについてモデルのコからやりすぎちゃったっ て話しを聞いてたんですよ。そういう話を聞くと警戒するじゃないですか、普通は。でも、実際に会ったら想像してた人と全然違ってた。すごく押しの 強い人だと思ってたから(笑)。
宮「それがそうじゃなかった?」
菅「撮影のあとに、ご飯食べに行きましたよね。それがすごく楽しくて。」
宮「そうそう、六本木の『中国飯店』に。異常に盛り上がった(笑)。」
菅「未成年だから、お酒も飲めないのに(笑)。出された老酒漬けのカニで酔っぱらっちゃったみたいで。」
宮「それ以来、ノリが合うかなぁっていう感じだったかな?」
菅「そうは感じなかったけど(笑)。」
宮「あっ、そう(笑)。でも、それから全然会う機会がなくて、卒業式があるって聞いたんでぜひ撮りたいと思ったんだ。撮っておかないといけないんじゃないかと。ひとつの記録として撮らせて欲しいと思った。」
菅「私に仕事以外で撮りたいと、そこまでいってくれたカメラマンはいなかったから、光栄だなと思った。そういう気持ちはうれしいなぁって。」
宮「そのあと仕事が何本かあって、本格的に撮影を始めたのは半年後(96年9月)の伊豆の下田からだった。」
菅「バーベキュー。」
宮「そう。みんなでバーベキューをした。」
菅「そういえば、いろいろな所に行きましたね。」
宮「どのロケが一番つらかった?」
菅「蔵王・・・・・」
宮「僕も同感だな。あの時は撮影に対するお互いの考え方が、少しズレてたよね。」
菅「その前にロスで撮ったのがスゴいよかったのに、そのあとの蔵王が全然ダメ。」
宮「ロスでは、すごく開放的になって、初めてカンノが自然に見えた。」
菅「うん、すごく楽しかった。」
-ヌード撮影をOKしたのはロスにいた時だったとか?
菅「今年の2月の中旬・・・・・、サンタモニカの観覧車の中でした。」
宮「お互い別の仕事でロスに行って、偶然休みが同じだったんだよね。」
菅「宮澤さんがホテルに迎えに来てくれて、みんなでサンタモニカピアに行ったんですよ。」
宮「そこで、観覧車に乗ったときだったね。」
菅「そう、真上で止まっちゃったんですよね!すごく長く感じた。5分ぐらい止まっていたような気がする。その時「前にお話いただいたことなんですけど やってみようと思います」みたいなことを言ったと思います。」
宮「あれは僕にとって一生忘れられないシチュエーションだったな。空もまっ青で、午後の4時ぐらいだったかな、太陽も斜光できれいだった。バックに 海が見えて。それにそこの観覧車って屋根がなくて。」
菅「そう、だから風が入ってくる、入ってくる。でも黄色でかわいい観覧車だったな。ふたりで向き合って座ってて。それまでふたりきりで話す機会がな かったから、観覧車止まってるし、いいチャンスかなと思って。だけど、そんなにポンって決まったわけじゃないんですよ。自分の中で決心がついた のは、2月に入ってから。「そんなの絶対、ダメ!」だったのが、「そういうのもありかな」に変わって、「よし一回撮ってもおう」にスライド、スライドしなが らっていう感じだったんで、どこかでポンって変わったわけじゃないんです。」
-(今年の)2月に宮澤さんから手紙をもらったと聞いてますけど?
菅「誠意みたいなものを感じる手紙でした。「いろんな私を撮りたい」って言ってくださったのと、「写真集にするのであれば、タイトルはこういう形がい いね」って。思い入れがあるというか・・・『エンジェルシャドー(天使の影)』ってタイトルを宮澤さんが考えてくださったんですよ。「人には表と裏があ る」という意味みたいなんですけど、でも、「私が天使だなんて、宮澤さん、それはちょっと違うよ」って思ってた。
宮「でも天使の影って、悪魔って意味もあるよね。」
-菅野さんの家でのプライベート撮影は、いつでしたか?
宮「5月と6月の2回に分けてだったかな。合計1週間ぐらい。初めてカンノの家に行ったけど、意外に普通の女の子の部屋だなって感じだった。けっこうきれいに片づいているのかなと思ったらそうでもなかったり(笑)。」
菅「うん、雑然としてる(笑)。」
宮「"ああ、いい空間を持ってるなぁ"と思った。」
菅「そうですか?」
宮「玄関に、大きなイラストとか映画のポスターみたいのがあったよね。」
菅「あっ。ウォン・カーウァイの。」
宮「靴が雑然と置いてあったり。」
菅「そう、玄関狭いんですよ。そんなコメントするほどたいした家じゃないって(笑)。」
宮「"生活感があるな"っていうのが第一印象だった。」
-5月の撮影は何日間ぐらい?
菅「2日間ぐらいです。」
宮「1日目撮って、帰って次の朝から来るというスケジュール。カンノの家の玄関でマネージャーさんから「じゃ、あとはヨロシク!」と。それで、昼も夜も、ずうっとダラダラ一緒にいて、その中で、"あぁ、いい表情だな"と思ったらシャッターを押す。」
菅「撮っていないあいだ、ずっとダラダラしてて、いろんな話をしたりとか、テレビを観たりとか。でも、私はいつも通りにしてただけ。」
宮「写真を撮ってることを意識してほしくなかったからね。」
菅「『笑っていいとも』を観たりとか。UAのCDを聴いたり、タイガー・ウッズのニュースを観たり・・・・・。」
宮「カンノっておもしろい習性があって、買ってきたカーテンの値札を取らない。」
菅「そう、取らないの、ずうっと。全部宮澤さんが取ってくれた。」
宮「そうだよ。なんで?」
菅「なんで取らないんだろう。理由はないんですよね。」
-6月の撮影はどのように?
宮「それも5月の延長で、うちの事務所で撮ったり、カンノの家に行ったり。それが6月7日から4日間ほど。」
菅「4日間といっても、4日間ずっとじゃなくて、昼の3時くらいからとか。ブレークもけっこうありましたね。」
宮「カンノが料理作ってくれたりしたこともあったよね。」
菅「うん。エビグラタンとか、アボガドサラダとか、ピザとか。ピザは冷凍でしたけど(笑)。」
宮「それで突然「私、お風呂に入ります」ってお風呂に入って。それが裸を撮った最初かな?自然だったね。」
-ふたりきりで撮影してると、個人的な感情が生まれませんか?
菅「それは恋愛感情ってことですよね。そういうのはね・・・・・。本当にないから、「ない」としか答えようがないんだけど、なんだか世の中はそれじゃす ませてくれないんですよね。」
宮「なんでみんなそういうふうに思うのかな?不思議だね。ヌードを撮ったからって、恋愛感情があるって思われたら、カメラマンなんて職業やってられ ないよね。」
菅「私と宮澤さんは、ドラエもんとのび太の関係ですからね。」
宮「カンノはいつも、おもしろい表現をするよね(笑)。」
菅「まあ愛情というより愛着ですね。恋愛感情とは違います。」
宮「僕は、いまだに1日1回か、2回は見るよ、写真集を。自己満足してるわけじゃないけど、あきないんだよね、本当に。」
菅「私は・・・・・、あまり見てない。この写真集って自分にとっては記録だから、いわばアルバムみたいに本棚に大切に飾っておくような感覚なんですよ 。」
宮「僕はこの写真集で、自分の創造性を前面に押し出すことより、自分の存在を打ち消して、裸眼に映ったままのカンノを表現することにこだわった。 僕にとって、まったく初めての挑戦だったから、なおさら新鮮に感じるんだと思う。」
菅「私が、改めて写真集を見返して思ったのは、私自身、本当に女優としての素質があるとか、カリスマ性があるとか、そういうことでは全然ないんだ なということ。街を歩いてる女の子より芸能界っぽくないなと思った。」
-最後に読者にメッセージを。
宮「いろいろ言ってはきたけど、やはり写真集を見てもらって、感じてもらうことが一番だと思います。」
菅「心配してくださった方もいると思いますが、今は、ちょっと突き抜けたというか、そういう感じがしてるんです。これでパブリックイメージは変わるかも しれないけど、私は相変わらずだし、マイペースで、何ていうか晴れ晴れしい健やかな気持ちです。」
ふつう、女優とカメラマンの対談はカメラマン主導で話が進むんだけど、(あくまでも文面からの印象ですが)今回のインタビューは、菅野主導で、宮澤さんが気を使いながらしゃべっているなという印象を持ちました。宮澤さんが気を使っているのは、菅野という被写体を失いたくないという気持ちがあるからなんでしょうが、週刊宝石のインタビューで「基本的に、男と女の距離感で撮らないと、見る人に波及効果がないと思うし、こういう写真は撮れない。そういう疑いをもたれるのは仕方ないことですし、そういう絵が撮れたことは成功。嬉しいですね。」と答えていた人が、(菅野が目の前にいるとはいえ)「なんでみんなそういうふうに思うのかな?不思議だね。」っていう前言を覆すような発言をするのは、ちょっといい加減すぎるんじゃない? 疑われるのがイヤなら波及効果なんて狙わなければ良かったんじゃないの?
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