Olive(99.2.3)NYで育ったメリットは、視野が広くなったことですね

 宇多田ヒカルさん、1月川日で代歳〕ニックネームは”Hlkki”

「英語でキスマークって意味なんだけどね」と照れ臭そうに言う。そんなこと、もう知ってるって人もいるょね。彼女は去年の12月にミュージシャンとしてテビューした。デビュー前から話題になってたシングルのタイトルは「オートマティック」。曲はR&Bなんだけど、うわあ、なんだこれって思うぐらい歌うまい。しかも英語の発音、すごくネイティブなのでびっくりする。これで作詞作曲も彼女だなんて何者なんだって感じ。

 じつは、ヒカルさんはNYで生まれた。

現在は自分の仕事のために東京にいるけれど、いまでもNYに家があるし、以前ときどき帰ってきていたときもインターナショナル・スクールに通ってた。だから外国育ちみたいなもの。英語がうまくてあたりまえなんだけどね。

 ヒカルさんがデビューしてうれしいって思っているひと、多いんじゃないかな。だって、いままで10代の気持ちそのままで、ちゃんとR&Bを歌えるひとなんていなかった。そして彼女がパーソナリティをやっているラジオ、もう聞いた?おもしろ−い!。彼女が育った環境はやっぱ普通じゃないんだけど、なんだかすこく気持ちが通じる。同じくらいの年で、自分の意見をはっきりメディアを通して言う子がいるのってうれしくない? そんなヒカルさんのマシンガン級のおしゃべり、さあスタートするよ。

アメリカン・スクール、変わった子もいるよ。

 いま行ってる学校はアメリカン・スクール。共学で、友だちは男の子も女の子もたくさんいる。

 アメリカン・スクールっていっても、基本的にはふつうの学校と変わらないと思うよ。学校帰りによく行くのは吉祥寺。友だちと「まず食べよう」とか言って 「マック」や、「スターバックス」行ったり。あと、男の子はみんなゲーセンにはまってる。

 みんなでなに話しているかというと、話題っていう話題、ないんだよね。くだらない話ばっかしてるから。あ、ひとり変わってる子がいてね。みんな「レイガン」って呼んでるんだけど、動物のもの食べないんだ。動物のもの使わないし、アニマル・テストしてる製品も使わない。頑なに守ってる。それってすごいなと思うんだ。昼休みに動物が殺されてるところの写真載せたパンフレットを配ったこともあって、見ちゃった女の子とか落ち込んでた。

 このあいだ「マック」行ったときレイガンがいて、みんなで「どういうことなんだ、それは」とか始まって、熱い討論になったの。ふたりくらい白熱してやばかった。私はどっちでもいいっていうか、ぴんとこなかったな。でもそういう変わった子は、けっこう多いよ。

 それからおもしろい話があって、学校に30ぐらいクラブがあるんだけど、日本語にするとこうかな、「ゲイと普通の人の連合」っていうのがあるんだ。ゲイとパイの人が入ってて、一般の人との理解を深めようっていうクラブなんだ。数人しか入っていないんだけど。1階の廊下の告知板にビラが貼ってあって、調査の結果人間の10パーセントぐらいはゲイなのに、この学校に少ししかいないはずはないとか、ミーティングに自由に来ていいとか書いてある。で、そのビラを授業参観日に親が見て、超大問題になってるのね、いま。こんなことがあるなら、うちの子は辞めさせるっていう規とかいたりして。でも、そのビラ貼ってあるんだよ、いまでも。おもしろいなあと思って。

作品を批評し合う、美術の授業が好き。

 勉強はね、すごいよ、大変だよ。先生が熱心に進めてくれたから、APっていう世界共通でアメリカの大学の単位が取れる学科もとってるんだ。でも最近わかってきたんだ、理数系大嫌い。英文学とか歴史とか好きで、いちばんは美術かな。とっている授業はドローイング。ほんとは油絵やりたいんだけど。人間描くのが好きなんだ、おもしろい。風景は苦手だけどゴッホは好き、いちばん。NYの家はメトロポリタン美術館のすぐそばで、行くと必ずゴッホを見てた。初めて見たとき、すげえ、なんだこれって思って。太陽もなんか熱いじやん。ダリも好き。なに考えてるんだろう、この人って感じ。

 授業ではみんなの作品をひとつずつ評価するんだ。おもしろいよ。授業中、黙ってたらばかみたい。この子、なにもわかってないって思われちゃう。目立たないと、いない存在になっちゃう。先生とも仲良くなれるしね。先生はおとなだけど近い存在。そういうの、いいと思うよ。

音楽好きの友だちがたくさんいて楽しい。

 アメリカン・スクールは秋から新学期なんだけど、学校が始まったときほっとしたよ。今年仕事を始めて、ずっとおとなのひとと会ってたんだけど、学校は若いひとばっかだから。私って若いんだよって感し。忘れちゃうよ。やっばり友だちといるのがいちばん楽しい。すごい仲いい子とかいるとうれしいし。

 なんかうちの学校って音楽性高いっていうか、音楽好きが多い気がするな。ボーカルやギターの授業もあってすこい人気。シンセが10台ぐらいある部屋があって、ちゃんとコンピューターとつながってて曲も作れたりするんだ。登録して先生のOKが出たらだれでも使える。友だちで音楽やってる人多いから楽しいよ。

 アメリカて生まれた、らしいけどね。どこで生まれたとか、関係ないよ。でも、向こうで育ったのは大きい。視野が広がる。やっば知らないことがあると、偏見持ったりするわけじやん。

 最近ちょつとキレてて、駅のホームで「ラララ」とかひとりで歌ってたりするの、疲れてると。はっと気がついてやばいとか思うと、人が見てるんだ「なに、こいつ」って感じで。向こうだと街ですれ違う人はみんなけっこう、ひとり言ったり歌ったりしてる。みんな気にしないから、東京はそういうとこ辛いって思った。向こうは、ほかの人のことはほかの人のことだからほっとくっていう主義なんだ。日本に来ていちばんわかんないって思うのは、電車のなかで携帯使うのは迷惑とか。まあ呼び出し音はちょっといやだって思うけど、でも街で使うのと同じじやん。なにが違うのって感じ。他人に対することで、関係ないじやんって思うこと、ちょっと多い。

 アメリカン・スクールの子たちはね、ほとんどの子が色んな国に行ったりしてるから。2年ずつぐらいでアフリカ、次はイスラエルとか。そういうの聞くと、私って経験ないなって思う。けっきょく比べるものの差なんだと思うよ。

歌を聴くのは気持ち、語学力は関係ないよ。

 英語話せたりすること、かっこいいっていう人いるけど偶然だから。自分でそうしたわけじゃないから。

 私、音楽で言葉がどれだけ重要か、よくわかんないんだ。大事だって思うんだけど。だって歌聴いて歌詞に感動したりするわけじやん、おぉ泣けるとか思ったりするけど。

 でも、私が人生でいちばん感動した音楽はモーツァルトの『レクイエム』とかクラシック系なのね。何語で歌ってるのかわかんないんだ。でも、なんかわかるのね、意味が。勝手に考えているんだと思うんだけど。歌詞わかんなくても、自分で広げていけばいいじやん。自分で詞つけちゃうとか。だから英語がわかるのも、いい点とそうでもない点があると思うんだ。

 音楽はこの頃ローリン・ヒルよく聴くし、ジョーすこく好きなんだ。

男の人のソロで歌もうまいし、曲もぜんぶ自分で書いてていいんだ。アール・ケリーの新しいのも好き。CDは、DJやってる子が多いから一緒に買いに行く。ほとんどCDだよ、私へたなんだよー!、アナログ聴くの。でもこんど友だちに教えてもらうんだ、夕ーン・テーブルの動かしかたとか。キュキュキュとかね。

 友だちで歌やってる子がいて、高いキーが出ないっていうから、ボーカル・レッスンしたときのこと教えてあげたんだ。そうしたら1週間ぐらいまえに学校で会ったとき、「声、出たよ!」とか言ってて。「やったね、出世払いしてね」って言ったら「え−っ」とか言ってた。

年に合ってるとか、大人の勝手な意見。

 歌は、すごくやりたかったわけでもないんだ。14歳のとき、英語のアルバム作ったけど「やってみれば?」「うん、やってみる」って感じだったし、今度も「日本語でやってみたら?」「やってみる」って感じ。将来的にミュージシャンやっていくかっていうと、ぜんぜんお約束できません。だから大学はいくよ。仕事は楽しいって感じじゃないから。遊んでるって感覚はない。

 歌やってないと、人間的につまんないかなぁ私って感じ。やってないと寂しいんだろうね。
 詞を書くときは、お父さんの若いころの恋愛詰聞いたり、言葉につまると友だちに電話して「男の子にこんなこと言われたらどう思う?」とか、色々話したり。『オートマティック』はすごい恋愛してるときに書いた歌。でも歌を録音するときもう別れてたから、ちょっと歌いにくかった。

 アメリカでも14、15歳の子が歌を出すと、年齢に合ってないとかよく言われる。でも年齢に合ってる歌とか、そういうのないっていうか14、15歳なんて経験もないし、そのまんまで作ってもそんなにおもしろくないし、しょうがないじやない? おとなは色んなこと言っても14、15歳でもそ、ついうことを思うのは思うじやん。だから年齢に合ってないとか言うの、ちょっと勝手だよね。

いまライブを、すごくやりたいんだ。

 雑誌とかで自分の写真を見ると「へぇーこの子が」って感じで、第三者みたい。友だちにもびっくりされる。歌聴いた子が「えー、ヒカルうまいんだ」とか、「CDよこせよ」とか。「友だちはCD買ってくれるためにいるんだよー」とか言ってる。写真週刊誌に取材されたら? むかつく、ほっとけって感じ。でも私、ネタなさそうじゃん。

 春休みにライブ、できたらいいな。

アルバムは3月に出る、はず。やっばり同じぐらいの年の子に聴いてほしい。そこから始まっていってほしいと思う。

今更って感じですが、ラジオを聞いていない人にはHikkiのパーソナリティーがわかんない人もいると思うのでインタビューを書き起こしてみました。ラジオに関しては12月に取り寄せて聞いてみたのですが、ナカナカのキャラクターぶりで前の分も取り寄せてます。世代は違うものの、主張のし具合が菅野に似てるような気がします(笑)。ここでも紹介するつもりなので楽しみにしておいてください。
”cubic U”のアルバムは地域によっては入手しにくいいようですが、3月には再販されるので、そちらもお楽しみに。


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